2007年9月1日 ヨネックスオープン2007北京へと吹く風 |
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第26回を迎えたヨネックスオープンジャパン。
四半世紀以上にわたり、日本で世界トップによる熱戦が展開されてきた。
ここでは07年大会を展望する前に、記憶に新しい1年前の興奮を再現しよう。
北京五輪の出場権獲得のカギとなる07年大会が、いかにヒートアップの予感を秘めているか、感じてほしい。
文・楊順行
“風”は、バドミントン選手にとってはやっかいな相手だ。わずか5グラム程度の、シャトルをめぐるゲーム。ほんのわずかな、体には感じないほどの館内の空気の流れが、勝負に微妙に影響する。なにしろ、飛行距離が短く低いショートサービスでも、“風”によって変わってくるのだ。それでも、一度体に保存された距離感、方向感覚はなかなか上書きがきかない。しかも、チェンジエンズもあるから、文字通り「風を読む」感性が必要になってくる。
ただ、いま日本のバドミントン界には、いい風が吹いていると思う。小椋久美子/潮田玲子という美形ペアの出現。しかも、05年にはYOJで3位、5ツ星のデンマークオープンで優勝と、実力も兼ね備えている。かつてないほどメディアからの注目度が高まり、昨年日本で行われたト杯/ユ杯には、1万人の観衆が詰めかけた。その余熱が残るなか、9月のYOJ2006では、坂本修一/池田信太郎が3位。ほかにも男子複で舛田圭太/大束忠司、女子複で松田友美/赤尾亜希、女子単で森かおりが8強に進出した。田児賢一というスーパー高校生の登場も頼もしい。
そしてなんといっても、オグシオと坂本/池田の世界選手権銅メダル。同大会では日本女子としては4年ぶり、男子にいたっては史上初めてのメダル獲得だった。来年に迫った北京オリンピックに向け、男女とも着実に力をつけているのである。
ピンボールのようなスピード感で激しく、目まぐるしくシャトルが動くダブルス。スピードに自信を持つ坂本/池田が大きな収穫を得たのは、YOJ2006の準々決勝だ。直前の世界選手権で準優勝したクラーク/ブレア(イングランド)を、最終ゲームにいったんは逆転されてからふたたびひっくり返したことだ。池田が前でゲームを作り、坂本が後ろから打つ。準決勝ではファイナルで惜敗したが、同大会の男子複では16年ぶりの3位という快挙に「スピードには手応えがある。あとは、緩急を使われても大きな展開で対応できれば」(池田)と、世界を視野にとらえた大会だった。
男子シングルス決勝は、さながら剣豪の立ち合い。剛の林丹(中国)に、柔のタウフィック・ヒダヤット(インドネシア)の対戦だ。タフィーは、豪腕サウスポーのスマッシュを封じたい。まるで体の一部のようにラケットを操り、相手の攻撃を柳のように受け、ネットで試合をつくる。追い込まれても強烈なバックハンドで逆襲し、根負けした林丹がネットミスを繰り返した。1ゲーム先行。2ゲームは、大きなラリーに持ち込みたい林丹がタフィーをネットから遠ざけ、徐々に糸口をつかむ。いかに自分の間合いに持ち込むかの勝負。好機に300キロ超の強打を連発した林丹が2ゲーム目を奪うと、防戦が続くストレスに気分屋のタフィーが集中力を切らした。結局、3ゲーム目をあっさりとモノにした林丹がYOJ連覇を果たしている。
そして白眉は、女子シングルス決勝。張寧と謝杏芳(いずれも中国)という当時の世界ランク1、2位の女王決定戦は、ファイナルも延長ゲームまでもつれる。張が計算し尽くされた配球で抜け出せば、謝がクロスカットの切れ味で追いつく。まったくの互角。コートの息づかいが聞こえるようなラリーの濃密さに、客席からは感嘆のひと呼吸あと、拍手がわき起こる。マッチポイントが移動するたび、優勝の瞬間を狙ってカメラマンがコートサイドを移動する。読み始めたら止まらない本の書き手を“ページターナー”というが、この試合もまさにそうだった。目を離すことができないが、どちらかに1点が入るごとに確実に結末に近づいていく。張か、謝か。そして……ついに29オール。75分間の起承転、エンディングは張の優勝だった。
日本代表のある女子選手が、まるで一人のファンのように、客席からじっとこの試合を見つめていた姿が忘れられない。アスリートさえ純情なファンにしてしまうのが、スポーツの世界水準である。最高の技術と知略、体力と精神のぶつかり合い。自国選手への肩入れは二の次だ。サッカー、野球、陸上競技、テニス……ドラマそのものが、心地いい陶酔をもたらしてくれる。よくできたミステリーのように、そこには緻密に計算されたプロットと、幾重にも張りめぐらされた伏線があり、予想もつかない結末がある。そこが、たまらない。
さあ、YOJ2007。今年から、BWF(世界バドミントン連盟)の世界区分の改定により、YOJはスーパーシリーズとなった。年間12試合のこのシリーズには、各種目とも世界ランク40位程度までしかエントリーできない。しかも、北京五輪に向けての熾烈なポイント争いが5月からスタートしている。例年以上にハイレベルな戦いになることウケアイだ。「05年の3位がきっかけで、海外の大会でも上位に入れるようになったと思います。YOJはほかの海外トーナメントとは違う。日本の応援してくれる方々のために、いいプレーをしたい」(小椋)。バドミントンのページターナーたちが、今年も日本にやってくる。
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坂本/池田は準決勝で敗れるも、会場からはその奮闘に温かな拍手が送られた |

3ゲーム29-29の死闘を制し、両手をあげて喜ぶ女子シングルスの張寧(中国) |

男子シングルスは中国の林丹が2連覇。豪快なジャンピングスマッシュには観客からため息がもれた |
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人気者が頂点に返り咲き。男子ダブルスは00年シドニー五輪優勝のチャンドラ(左)/トニー(インドネシア/現アメリカ)が2度目のV |
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混合複の決勝はインドネシア対決。リンペレ/マリサ(左2人)が頂点に |
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初の準決勝進出を遂げた坂本(右)/池田。池田の腕には“欲絆”と書かれていた |